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2016年1月

2016年1月 6日 (水)

綺麗な世界 優しい世界~第一話~

私は発達障害だった。

学生の頃から少し人とずれていて、
空気の読めない子だった。
女の子なのに部屋はゴミだらけ。

人に会う予定がなければお風呂に入らず、
着替えもしない。だからオシャレはどうしたらいいのかわからない。

社会人になってから数年は普通に働けていた。
でもある日突然、耳鳴りがするようになった。
めまい、頭痛、吐き気。
ひどい気分の落ち込み。
自分をまったく肯定できず、冷たく暗いトンネルの中を歩いているような気分だった。
会社に出社しても吐き気で一日中トイレにこもるような状態。

いつの間にか過呼吸を起こして倒れ
そのまま退職届も出さず逃げるように実家に帰ってきた。

それからは部屋に閉じこもり家族とも最低限度の会話しかせず、
少しのお小遣いをもらい、コンビニにだけ出かける生活をした。
コンビニなら会話をしなくて済むからだ。

コンビニでお弁当とビールや日本酒を買ってきて
貪り食う。飲む。
咀嚼などせず、味わうこともせず、ただひたすら喉に流し込み、
胃の中でビールとかき混ぜる。

だんだんひどくなり、
コンビニへ朝買い物に行き、一日中飲んだくれるようになった。
パソコンでひたすらネットを見て最初は喜んでいたが
画面を見ていると眩しく感じるようになり、
ガンガン響いた。

タバコをちょっと吸うようになるも吐いてしまった。
吐瀉物は面倒なのでそのまま放置した。
最初は臭かったがそのうち乾燥した。

部屋はコンビニ弁当の容器が積み上がり、ペットボトルが転がる。
入口からジャンプするように布団に移動する以外は
足の踏み場がない。
その布団も読みかけの漫画や鼻をかんだテッシュ、脱ぎ捨てたパンティで
すぐ埋まった。

私は私でなくなった。
本も開いては見るものの、3秒もしないうちに視界が眩しくなる。
内容が入ってこない。
頑張って読んでも漫画の吹き出し一つ分も記憶できない。
TVは元々ない。ラジオをつけっぱなし。
もうラジオに近づくにはごみが山になりすぎたので
チャンネルを変えることも出来ず、NHKのまま。
聴きたくない演歌、面白くもない漫才、全く自分に関係のないニュース、
火傷しそうなほどの高校球児とボールの快音を流したまま
天井の染みを見つめる事を1年続けた。

友達もみな離れた。繋ぎとめる術もない。
趣味もない。
彼氏もいない。
親はもう年老いた。
実家だから生活保護も受けられない。

ありとあらゆる相談や施設を利用したが同情の相槌は何も生み出さなかった。
詰んだ。

もっと辛い人もいる。
お前なんか甘えだ。
死ねよキチガイ。

私は

私は

私は

死ぬのが怖い。

手首を切ってみた。
血が流れる。
ヒリヒリと痛むだけだった。

睡眠薬も致死量を調べてあきらめた。
セコナールを処方してくださいと主治医に懇願してみたが
説教されてしまった。

なんとかハローワークに行って仕事を探してみたものの、
やる気はあるのに戻してしまい、あっという間に解雇された。

死にたい。でも死ねない。
生きていたくない。
私は
私は

いったいなんだ?

いったい何のために産まれた?

障害を持つこと。
それは身体でも精神でも
幸せなことではない。
個性と片づけるならその責任を負うべきじゃないのか?
しかし実際は面倒くさいで見えないところに追いやっているだけじゃないか。

私は手段も目的もない

そんな時だった。
いつもはぼんやりとしか入ってこないラジオで
「学生が安保法案に反対してハンガーストライキをしています」と言っていた。

気になった。

ネットで調べたらなんてことはなかった。
左翼団体に騙されたのか、大学生がラマダンよりも生ぬるい
座り込みをやる、しかもハンストなのに募金を募っているとか
ロクでもない情報しかなかった。

しかし私はいいなと思った。

こんなクソバカ野郎どものように
お花畑の天下国家に便乗した革命ごっこをしたくはない。

でも発達障害者のために私がハンストをしたらどうなんだろう?
厚生労働省の前で座り込んで完全に食べ物も水も口にしないハンストをやったらどうなんだろう?

私は死にたい。
発達障害者も特別な才能がる人間なんて一握りもいない。
親が資産家でもない限り
みんな頑張りに頑張りぬいてやっとドジっ子になれるかどうか?だ。
そして地べたを這いつくばるようにしてなんとかしがみついてる。
それもかなわぬ人は部屋から出てこない。

そんな表に出てこれない人達に呼びかけても集まりなんかしない。
出てこれない。

そんな人間にはいるはずだ。
―生きていない。ただ死んでいないだけ

しかし私が行動したらどうだろう?

私は死にたい。
ハンストをする。
しかし独りでする。
おかしな団体やNPOなんかに手を出させない。私だけの領域。
賛同者だけいてくれればいい。
姿は見せなくていい。

死ぬという手段のために
「発達障害者の安楽死施設の実現を」訴えハンストするのだ。
私は決めた。

親の財布から1万円抜き取った。
これが東京へ行く資金になる。

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思春期をこじらせるのはみんな同じ~第二話~

私はいつも思うんです。

なんで男子はエッチな話をしてるのに
女子は服とかスイーツの話ばかりしてるんだろう?
好きな芸能人も別にいないし、TVも見ない。
私はラジオを聞くんです。それもAM。

退屈な高校生活、深夜番組に投稿してハガキを読まれるのが一番楽しみです。

でも、もっと興味があることも・・・・できたんだゾ!

なんだか最近、熱くなって・・・・
どうしても我慢できなくて・・・・

「ねぇ!男子ふざけないでよね!」
満里奈が理科の授業の準備をちんたらやってる男子をしかりつけた。

―ちんたら!?

今私、心の中で『ちん』『たら』って言ったよね?

『ちん』の何が『たら』するの?
ダメダメ!今そんなこと考えちゃ!
しっとりしちゃう!

「ほら男子ちゃんとしてよ!」

―ちゃんと『して』よ!?

満里奈!?
あなた男子にちゃんと何を『して』もらうの?
待って!あなたは私より進んでるの?
たしかにちょっと遊んでる風のギャルっぽい感じだし・・・・
でも!そんなのダメ!

「男子!早くそれ入れて!」

―はわわー!

『早く』どこに『それ』を入れるの!?
満里奈ダメだよ!
私たちはまだ高校生なんだよ!?
自分でするだけで我慢しないとなんだよ!
でも満里奈が間違ってそんなことをしていたとしても私目を覚まさせる。
ズッ友だょ?

「ねぇねぇ今日は何やるんだっけ?」
「え?置換反応だよ」

―ドガビーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

痴漢!
反応!

そんな・・・・
痴漢されたら声なんか出せない・・・・
あんなことやこんなことされて・・・・
私たぶん、きっと・・・・

♪ピンポンパンポーン

「生徒の呼び出しをします。2年C組の町田あゆみさん。
担任の黒崎先生がお呼びです。大至急職員室に来てください」

「あれ?あゆみ、あんた何かしたの?」
「え?なんだろ?この間県の書道大会に作品応募したくらいかな」
「入賞したんじゃない?あんた書道すごいもんね。
筆でさらさらさら~っと」

―『筆』!
私、筆で・・・・ああ・・・・

「・・・ゆみ!あゆみ!」
「ええ?」
「何ぼーっとしてんの?早く職員室行きなよ。大至急って言ってたでしょ」
「そ、そうだね」

理科室を出て廊下を職員室へ歩き出した。

大至急。

だいしきゅう。

大しきゅう

大子宮

―きゃーーーーーーーーー!

黒崎先生!
私の子宮はきっとそんなに大きくありません!
ふ、ふ、ふ普通ですから!
ま、まさか

「町田~お前の子宮、大きくないか確かめてやるからな」
なんてあのイケメンボイスで言われちゃうの!?
生徒と教師の禁断の恋!?

ああ!

もう・・・・たえ・・・・られ・・・ない・・・・

バタッ

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海のない街~第八話~

それは僕がいない時だったという。

ちょうど「あおい」には左右口さん、愛宕さん、山田さんの
3人が話しこんでいたそうだ。

猫達はちょうどエアコンの風が当たる場所にそれぞれ陣取ってい、
すやすやと眠っていた。
料理もひと段落し、ほっとした雰囲気があふれていたのだろう。

「こんにちは」

扉が開いた。
モエちゃんは「いらっしゃい!お一人ですか?」と声をかけた。
「あ、いや客じゃないんです。こちらに鬼弦海さんはいらっしゃいますか?」

その男性は長身でスマート、絵に書いたようなさわやかな男性だった。
「き、きげん?海さんならいるっちゃいますけど・・・海さんお客さんだよ・・・あれ?海さん?」
モエちゃんはその男性から目線を逸らしてじっとしている海さんを見た。
いつもと違う。

「久しぶり、海」

男性は自分からカウンターの真ん中へ腰掛けた。
海さんはまだ目をあわさない。

「あのー何かお飲み物は・・・・?」
モエちゃんがおそるおそる聞いてみる。
「せっかくだから日本酒をロックで」

まだ海さんはうつむいている。何も話さない。
常連3人もさすがにこの空気を感じ取ったらしく
話し声が消えた。

「なぜ?ここに・・・・右近くん・・・・」
海さんはやっと口を開いた。しかし目はあわせていない。
「急に仕事を辞めて行方不明になった恋人を探してやっと会えたんだ。
なぜってこともないだろう」
「あなたにはもう関係がないことですから。
不義理をしたのは申し訳なかったです。でも帰ってください」
海さんは震えていたという。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「どうして急にいなくなった。1年前だ。仕事も順調だった。
俺達もうまくいってた、それなのにどうして?」

「私はもう教育の場にいる事に疲れたんです。祖父母もも亡くなったし、
ちょうど良いタイミングでした。」
「僕に一言も言わなかったのは?」
「愛していたから。別れ方がわからなかったの。私はそういうのまったく苦手だし」
「そして今はこのお店を切り盛りしてるわけだ。ふうん」
右近はタバコに火をつけた。

いつのまにか猫はみないなくなった。休憩室に消えたのだろう。
モエちゃんが灰皿をさっと出して距離をとる。

「なぁ、海。怒ってるわけじゃない。僕は君と結婚するつもりだった。
素晴らしい教育者になる素質があった。そのまま君は輝くべきだったよ」
「・・・・私は錯覚していたんです。教育者になる資格なんかなかった」
「特別支援学級の担任としてがんばっていたじゃないか?」
「とにかく私は間違っていたんです」
「・・・・わかった。その件は終わりにしよう。
僕とは?このまま帰れってのも酷い話だ」

海さんは包丁を取り出しカウンターへ置いた。

「気に食わないのならば刺し殺してもらってもかまいません。
私はここにいる。私があなたにしたことは本当に最低で最悪。
何か注文をつけられてもプライドが許しません。
だから刺して下さい。」

右近はタバコをもみ消しやれやれといった顔で立ち上がった。

「また来るよ」
「もう来ないで」
「それじゃ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

僕は帰り道を急いでいた。
すっかり商店街の町おこしプロジェクトで遅くなってしまった。
もう日付が変わってしまう。
あおいに今日は寄れないな・・・・

と前を通りかかろうとしたら店内から明かりが漏れている。
最初は消し忘れだろうと思ったが気になって扉を開けてみる。
鍵がかかっている前提で力をこめたから拍子抜けするほど
あっさりと扉が開いたときに「あっ」と声を出してしまった。

カウンターに突っ伏している海さんがいた。

「どうしたの?海さん?」
「あ、対馬さん、ずいぶん遅いですね」

かなり酔っているようだった。
日本酒を冷でがぶ飲みしていたらしい。一升瓶がもう半分空いている。

「こんな飲み方してたら二日酔いになっちゃいますよ、どうしたんですか?」
体がふらふらとしている。
頬は赤く目はぼんやりとしていつもの涼やかな海さんはどこにもなかった。

「いーんです。ひっく。ほら、対馬さんも飲みましょう、はい、ほら」
無理やりグラスに注いでいる。こぼしそうだ。

「いったい何があったんですか?」
「ちょっとね。元カレが来たんです。うふふ。」
「元カレ?」
「私は元カレから黙って去ったものですから探して歩いていたようですね。
見つかっちゃいました。」
「海さん、もういけない。もう帰って寝ましょう。自宅まで送りますから。ね?」
しかし海さんはがしっと僕の腕を掴んで離さない。

「私は東京で産まれました。母が教師になってやはり教師だった父と出会い私が産まれました。」
「昔話はまた聞きますから、ほら」
「いーんです!ほら座って!飲んでください」
「いやね・・・体に悪いから・・・・」
「父は立派な教師でしたが人間としては最悪でした。暴力、浮気、金銭トラブル・・・・
母は離婚し、教師を辞めてここに戻りました。しかし心労で私が3歳の時に亡くなりました。
私は強引に父に引き取られ、お金には不自由ありませんでしたが愛情もなく、
ただ暗闇を無灯火で走る車のような気持ちで生きていました。」

ろれつが危なっかしいしゃべりで過去を打ち明ける海さん。
グラスを一気に空けた。

「私の逃げ道は勉強と料理でした。上手に料理をすれば、褒めることはなくても父の暴力がないから
自立するために必死で勉強し、料理をしました。
そして私は教師になり、障害者の特別支援学級の担任になりました。そのときです、元カレと知り合ったのは。
カレも教師でした。」

おかわりを要求する海さん。
もう限界は超しているだろうが注がないわけにはいかないようだ。

「しかし、私は父と母が歩んだ道をトレースしていることをずっと気にしていました。
カレは優しい人でしたが。私に穢れた血が流れていると思うと吐き気がしました。
そんな時、祖父母が交通事故で同時になくなり、このお店が閉店せざるを得なくなりました。
私は全ての違和感から逃げました。そしてこのお店を継いだのですよ」

そうだ。
たしかにそうだ。
この街で育ったのならば僕も同じ町内、知らないはずが無い。
しかし、僕はこのお店に通うようになってから海さんを知った。

「私は鬼弦(きげん)から母方の姓、蒼井になり、ひっそりと生きていくつもりでした。」
またぐいっと酒を煽り、お世辞にも上品とは言えない息を吐きながら
「しかし父の呪縛からは逃れられないようです。自分のせいでもありますが」

僕の顔を見つめる。
近い。
ドキドキする。
今すごい大切な話をしているのに何の理由で鼓動が激しいのかわからなくなる。
「鬼弦結城。TVで子育て論を語り、本で綺麗事を書いている有能な悪党、それが私の父。
母を殺して平気な顔をしているあの男の血が流れていると思うと・・・私は!・・・・」

抱きしめた。
壊れそうだ。もうやめてくれ。
「元カレからも逃げました。私は何もなくただ生きると思っていました・・・・
でも・・・・この街はあまりに私に優しすぎる・・・・」

僕の腕の中で泣きじゃくる海さん。
こんな時に気を使って出てこない猫。
照れくさい。
しかし、今この人は壊れる寸前だ。

わからない。わからないけれど今はこうしているしかない

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